ブラジルのいえ

27歳でブラジルに移住しました。国土は日本の23倍、人口は2倍。広さやでかさでは世界一の国であります。故に「いえ」もでかい。その「でかい」いえを設計するのは意外と難しいこと、分かりますか。階段の下や屋根裏を上手に利用し、可変とびらを駆使して、様々な機能用途を兼用させ、結果カラクリ屋敷のような設計をもって「建築家の腕前」とされる文化で育った私が、必要ならいくらでも伸ばせる大空間にトイレやキッチンを設計せよといわれると、とたんに拠り所が無くなってしまう、そんな経験を初期に経験しました。
一見無理そうな空間に手品のように収める腕前はほとんど無意味。機能面では余裕だらけの空間に感動空間を実現する腕前こそが、建築家に求められる価値なのです。そういう視点で例えば、巨匠オスカー・ニーマイヤーの自邸を見てみましょう。まずは平屋。有機的な曲線。ここに一人住まい。無駄といえばその通りかも知れませんが、その場にたったときのあの「感動」は何なのでしょうか。

こうして「いえ」の設計に空間の「感動」を求める私の基本姿勢が醸成され始めたのだと思います。